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- NG / ジュラジューム / 非常階段 “終末処理場”
NG / ジュラジューム / 非常階段 “終末処理場”
大阪の林直人氏が1980年に設立したレーベルがUnbalance Recordsで、そのLP第一弾が、このノイズ・アルバム”終末処理場”です。オリジナルのリリースが1980年と、多分、日本で1番早く「ノイズ」のLPをリリースしたのではないかと思われます。ここら辺の詳しいことは、既に色んな雑誌やメディアでも書かれていますので、詳細は省略しますが、このオムニバス・アルバムに収録されているバンド、NG、ジュラジューム、非常階段は、どれも同時の欧米のノイズ/インダストリアル・グループとは一線を画した音楽/ノイズを奏でていたと思います。そんな貴重な音源が、43年の月日を経て、Alchemy RecordsのAlchemy Records Essential Collectionsシリーズとしてリイシューされたことは、大変喜ばしいと言えます。因みに、ジャケ写の写真の因縁か、このオリジナルLPをリリースした頃に、関係者に不幸が続いて、レーベル・オーナーの林直人氏とJojo広重氏はお寺にお祓いに行ったとか。まぁ、それは置いておいて、収録バンドについて、簡単にご紹介しておきます。
NGは、Naoquiこと林直樹 (Organ, Synth, Tapes)が1979年から始めたユニットで、この時点ではToshitakaこと佐藤利隆 (B)とYukinaga (B)と言うダブル・ベースでのトリオ編成となっています。Discogsには載っていないのですが、当時、NGのライブ・カセット”Die Meine Gewalt”を購入し、その凄まじさに感銘を受けると同時に、林直樹を評して「彼は真面目だが、まともじやない」と言う言葉は、私にとっては、それ以来、座右の銘になっています。その後、NGは、1981年にUnbalance Recordsより7インチEP”Ugomeku Ego”をリリースしますが、それ以降の情報はこちらには入ってきていません。今はどうしているのでしょう?
ジュラジュームは、京都在住の八田尚彦氏 (Synth, Rhythm Box, G)のソロユニットで、この時期には、Zaitsu (Synth, Vo)も参加しています。その後、ジュラジユームの活動は途絶えたようですが、1997年に、突如、JoJo広重氏とのデュオでJulajiumとしてCD復活し、また、その頃から、一時期、旧Twitterで八田氏が毎日のように独自の電子ノイズ曲をアップしていたのですが、今はどうしているのでしょうか?
非常階段については、以前にもバイオグラフィーは書いてありますし、他の雑誌やネットでももっと詳しく書かれていますので、私如きが、今更、書く訳にもいきませんが、この時の非常階段は、JojoことJojo広重 (G, Vo), Mikawaこと美川俊治 (Audio Generator, Marcolinet, Organ), MakoことMasako Shigesugi (B, Vo), Okaこと岡俊行 (Drs, Rhythm Box), ZukeことKatsuhiro Nakajima(G, Vo), Sumire (Synth), Akuma (Visual Performance)と言う編成で、雑誌Heaven主催のイベントでのライブ音源です。本来、曲名の「腐食のマリィ」がバンド名であったのを、主催者側が勘違いして、出演バンドを非常階段にしてしまったことは有名な逸話です。
それで、内容ですが、A面は、NGから始まります。ミニマルなBのリフに歪んだオルガンとリズムボックスと言うA1, シーケンサーのようなシンセとリズムボックスのリズムにゴリゴリのBが突進し、歪んだもう一本のBと殆ど聴こえないVoが入り込むA2では、後半に歪みまくったオルガンも聴取できます。深いリバーブに包まれた、幾分、大人し目なBのリフに、リズムボックスと変調Voと共に響くA3, 単調なリズムボックスにオルガンと呪文のようなVoとBのリフが流れるA4, 突進するゴリゴリの2本のBとオルガンのせめぎ合いがカッコ良いA5で、次はジュラジュームの曲になります。ディレイを掛けたリズムボックスが怪しく響き、その間に変調VoやSE的シンセからなるA6, 機械のようなリズムボックスにショート・ディレイを掛けまくったGが暴れ、微かにシンセのメロディが聴こえるA7, マーチのリズムにショート・ディレイを掛けたGとマーチング・ソングのようなシンセのメロディが微かに聴こえるA8, これまたディレイを掛けたGノイズとリズムを刻まないリズムボックスに、シンセ・ノイズが乗るA9, 駆動力のあるDR-55のリズムにハレーションを起こしたGノイズが暴れまくり、途中、変調Voも入ってくるA10で締められいますが、唐突に終わります。
B面は、全てを使った非常階段のライブ音源なのですが、いきなりのDrsの連打から、MarcolinetやらVoice、更にはエレクトロニクスやGノイズと、まるでAirwayのような集団即興による肉体的轟音ノイズが繰り広げられています。これがそもそも「音楽」なのかどうかは別にして、正にカオスを体現していると思います。恐らく、実際のライブでは凄いことになっていたことでしょう。途中、Drsがかなり頑張っている所もあり、そんな所に、彼等が「ロック」を源流としていると感じられます。
このアルバムの面白い所は、A面2組が宅録派で、B面がライブ派と言うコントラストでしょう。もっと言うとA面ではリズムボックスが多用されており、B面ではドラムが多用されていると言えます。非常階段が、その後、ライブ・バンドとして活動していくことは良く知られたことで、それ故の「肉体性」を音のカオスの中に落とし込んでいるとも言えるでしょう。それに対して、NG(彼等は宅録だけではなく、ライブもやっていた)とジュラジュームは、リズムボックスが奏でる機械のリズムの上で、変調を施した電子音や歪んだオルガンが奏でられていると言う、当時のインダストリアル・ミュージックに対する日本からの返答でもあると言えるでしょう。個人的には、2本のゴリゴリのBと歪んだオルガンから成るNGの演奏は素晴らしいです。これが聴きたかったと言っても過言ではないでしょう。また、ジュラジュームの偏執狂的なディレイ処理は同時の誤用テクノロジーの代表的手法であり、それがまた懐かしくもありました。そんな3者3様のノイズ・ミュージックを1980年と言う時代にレコードとしてリリースしたUnbalance Recordsの偉業が復刻されたことは大変喜ばしいことです!!先ずはこのアルバムを聴け!と声を大にして言いたいです!
A1 NG “Cry Of Nylon”
A2 NG “Broken '80s”
A3 NG “Zisatz”
A4 NG “見つからない”
A5 NG “Theme (For Icy B)”
A6 ジュラジューム “嘆きのつぼ (Urn)”
A7 ジュラジューム “Radiation・I”
A8 ジュラジューム “行進曲”
A9 ジュラジューム “Radiation・II”
A10 ジュラジューム “来たるべき世紀”
B 非常階段 “腐食のマリィ”
[NG A1-A5 original version]
https://youtu.be/eXjgdXkZkx8?si=YewfQdvuZBO-OfRu
[ジュラジューム A6-A10 original version]
https://youtu.be/HYdwpA9k18A?si=7Cu280nLlLc20H8S
[非常階段 live from 「極悪の教典」]
https://youtu.be/tbFnMuUW-Tk?si=FkPBp7Y0fqRGZ-ZE
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