-
鉱物標本 セルサイト 繊維状(Cerussite)
別名:白鉛鉱、Lead Spar、White Lead Ore 産地:Santa Cruz Co., Arizona, U.S.A. ガレナ(方鉛鉱)の酸化等で鉛鉱床の酸化帯に生成する鉛の二次鉱物。 細かく砕かれたものは古くから白色顔料の鉛白として利用されてきた。ただしセルサイトが炭酸鉛(PbCO3)であるのに対して、本来の白色顔料である鉛白は人工的に作られた塩基性炭酸鉛(2PbCO3•Pb(OH)2))であり、天然にはハイドロセルサイトという鉱物で別に存在している。 鉛白の製造の歴史は古く、紀元前300年頃の古代ギリシャにおいて『植物学の祖』と呼ばれた哲学者、博物学者、植物学者であったエレソスのTheophrastosが記した『Περὶ λίθων(De lapidibus、石について)』にて既にその製法が記述されている。その内容は酢酸を入れた土器の上で10日程鉛を曝した後、表面に蓄積した鉛白を削り集め、再度鉛を酢酸に曝して完全に鉛が無くなるまで繰り返すといったものであるらしい。 セルサイトの名称については1565年にConrad Gessnerによりラテン語で『天然の鉛白』を意味する"cerussa nativa"という呼称で言及され、1832年にF. S. Beudantがcruiseという名称で記述した。ラテン語の鉛白"cerussa"に由来する現在のcerussiteという名称は1845年にオーストリアの鉱物学者であるWilhelm Karl Ritter von Haidingerが命名した。 その高い屈折率と分散度から、インクルージョンの少ない透明結晶ではスフェーンやスファレライト、ジルコンに匹敵するダイヤ光沢とファイアを有する希少な宝石となる。 標本の産地であるサンタクルス郡は1899年にピマ郡から分離して設立されて出来たアリゾナ州の郡である。郡名はピマ郡で発見された鉱物であるキノアイト(*1)の名前の由来にもなっている、17世紀後半にアリゾナ一帯で活動した宣教師、探検家のEusebio Francisco Kino神父が名付けたサンタクルス川に因む。サンタクルス郡には現在もKino神父に因んだ史跡が残されている。 2021年7月にミネラルザワールドin横浜にて購入。セルサイトは短波紫外光で黄色や白色の蛍光を確認できる場合もあるそうだが本標本では確認できなかった。 *1:キノアイト →鉱物標本 キノアイト(Kinoite)
鉱物標本 3~3.5 金剛光沢、ガラス光沢、樹脂光沢、真珠光沢、鈍光沢、土光沢たじ
-
鉱物標本 キノアイト(Kinoite)
別名:キノ石 産地:Christmas Mine, Dripping Prings Mountains, Gila County, Arizona, USA サンタリタ山脈やクリスマス鉱山他、わずかな銅鉱山で産出される鉱物。1970年にピマ郡サンタリタ山脈にあるヘルベティア廃鉱山で発見された。名前の由来は1700年頃にアリゾナ含むアメリカ南西部で活動したイエズス会探検家のEusebio Francisco Kino神父に因んでいる(*1)。 このキノアイトが見つかる一帯は大規模な斑岩銅鉱床が存在し、例えばロゼモンド鉱山では採掘計画が上がっているものの、先史時代の遺跡等の関係で住民の反対があり採掘は開始されていない等ゴタゴタもあるそうな。 この標本にも見られる透明な結晶はスカルン鉱物のアポフィライト(KCa4SiO20(F,OH)・8H2O)でキノアイトとよく一緒に産する。なのでこのキノアイト、班岩銅鉱床が生成する過程で石灰岩とマグマから放出された含銅熱水が反応してできたのかなと個人的に思ってる。 因みに日本でも2001年に岡山県で発見されている。 この標本は2020年にミネラル1000円マルシェで購入。 *1:Kino神父とサンタクルス郡 →鉱物標本 セルサイト(Cerussite) #鉱物
鉱物標本 2.5 ガラス光沢たじ
