カーボナード/金剛石
圧倒的な機械的強度を誇る炭素の元素鉱物。
歴としたダイヤモンドの一種で、『多結晶質』という特異な構造をもった変種です。
最も「硬い」鉱物として知られているダイヤモンドですが、それはあくまでも表面的な引っ掻き強さを評したもの。
明瞭な劈開性を抱えているため特定方向からの衝撃には滅法弱く、強い打撃が加われば為す術なく砕けてしまいます。
一方で、極微細な結晶の集合体であるこのカーボナードには劈開が見られません。
玉髄やヒスイと同様、結晶の緻密な犇めきあいが頑強性を生むために、通常のダイヤモンドを凌駕するタフネスが備わるのです。
このように個が群を成し堅固な一団となる様は、古代ギリシャにおいて無類の強さを誇ったというファランクスのよう。
ダイヤモンドの石言葉には "不屈" がありますが、あらゆる征服を撥ね退けるこの黒い塊こそが、その言葉を真に体現しているのではないかと思います。
ご覧のとおり能力のすべてを強靭さに極振りしているため、宝石としての煌びやかさはありません。
しかし、光すら通さない鉄壁ぶりにはある種の高潔さすら感じてしまい、工業用ダイヤとして捨て置くには惜しい内面的な魅力が詰まっている気がするのです。
#ダイヤモンド
鉱物標本
10
2012年
C
テッツァライト