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Eldridgeops milleri
シリカ累層(Silica shale)といえば、デボン紀の良質なファコプスEldridgeopsを産出した事で三葉虫コレクターには知られます。実際にデボン紀のEldridgeopsの暮らしていた海底はどんな世界だったのでしょう。この標本は、そんなシリカ累層の海底の様子を伺い知る事が出来ます。三葉虫の頭部を始めとする欠片が散らばり、他に腕足動物(Brachiopods) 、四方サンゴ類(Horn Corals)などの姿を見る事が出来ます。濃い密度で化石化していますが、この様な状態を見れば保存の良いシリカ累層であっても三葉虫の完全体など多くは存在する訳では無いという事は見えてきます。
Middle Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-41-2 Silica shaleTrilobites
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Amphoton deois
頬棘がなく丸い頭部を持ち、大き目な尾部も同様に丸いため、全体的に優しい印象を持ちます。胸部は節々がしっかりとしており、鋭く短めの棘になっており、背軸部にも棘の痕跡を持つので、頭部尾部との対比が別物の感じがあります。中国では、属名Amphotonの事を双耳虫という事から、頭部の見た目が耳を持っているかのような形状に由来するものと思われます。 中国名:女神双耳虫
Middle Cambrian Dolichometopidae,Corynexochina,Corynexochida TRI-691 ZhangxiaTrilobites
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Schizostylus brevicaudatus
成体でも大きくならなかった種類の様です。一番の特徴は、先端に吻というより角のような尖りがある事かと思います。ファコプスでは珍しく背軸部に棘も確認でき、短くとも鋭い頬棘も持っています。ボリビア産は、Calmoniidae科に偏りがあるので、同じような種類ばかりに見えてしまいますが、本種は非常に特徴がはっきりしているので、見分けがしやすい種類です。 [Left side:Positive/Right side:Negative]
Middle Devonian Calmoniidae,Acastidae,Phacopina,Phacopida TRI-345 BelénTrilobites
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Chotecops ferdinand
Hunsrück Shaleの軟体部が保存されたChotecopsは、三葉虫コレクターでなくても存在を知っている様な重要な化石ですから、既に新規標本を見込めなくなって久しい現在、例え市場に出て来ても、簡単には購入は出来ない価格に高騰してしまいました。化石化時に貧酸素環境において長い時を経て黄鉄鉱に置換されているため、通常の化石では残らない軟体部が残る事があります。この標本は小さ目ながら、腹側から剖出され触覚や並んだ脚が保存されており、外骨格だけでは伺い知れない腹側の構造を鮮明に残しています。
Lower Devonian (Pragian) Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-94-2 Hunsrück ShaleTrilobites
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Acernaspis orestes
三葉虫の軟体部で一番残りやすいのが触覚ですが、脚に関しては触覚より太くて外骨格にも近いように思えますが、何故か残存する化石は少ないのです。外骨格と違い組織の組成が腐敗しやすい事もありますが、そもそも軟組織が残存する環境が余程整う必要があるのという事もあります。更に脚は大概は外骨格の下側にあるため、折角の完全体外骨格の殻を壊し捲ってまで確認はしないという理由もありそうです。質の高いシルル紀三葉虫が産出するカナダ、ジュピター層ですが、この標本を見るまで軟体部が残存する事は私は知らなかったですが、左の触覚と右前方の脚が、はっきりと分かります。
Lower Silurian(Telychian) Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-466-2 JupiterTrilobites
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Salterocoryphe salteri
ポルトガル産では珍しく圧縮が無い標本です。見た目が近いColpocoryphe rouaulti(HENRY,1970)とは、尾部の畝があるか無いかで識別されますが、本標本は分かり難いですが尾部に畝が確認できるため、Salterocorypheに同定されています。 どちらの種もスペインやフランスなど近郊の地層からも産出されます。 【標本リンク】Pangaea Fossils http://www.fossilscapes.com/fossils-cat1/world-trilobites-for-sale/wtfs1/worldwide-trilobite-for-sale-1.htm
Middle Ordovician (Dariwilian) Calymenidae,Calymenoidea,Calymenina,Phacopida TRI-752 ValongoTrilobites
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Paradoxides gracilis
仏人地質学者Joachim Barrande(1799-1883)により研究され、著書[Systeme silurien du centre de la Boheme](1852)にて詳細な図版が描かれている本種は、三葉虫の研究史に足跡を残している重要な種類として知られます。世界のカンブリア紀の地層で見つかるParadoxidesの中でも収集家に知られる存在です。当時からの産地だったVinice Hillは、長年の採掘により枯渇しており、焦茶で艶のある本標本の様な質感があり、10cmを超える標本は、世界の収集家が放出しない限り市場に出来て来る事はありません。特に大型で頬棘が残る個体は希少価値が高いです。
Middle Cambrian(Drumian) Paradoxididae,Paradoxidoidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-307 JinceTrilobites
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Lepidoproetus lahceni
特徴的な大き目の吻と幅広体形で、この仲間としては大き目の体。長い頬棘も太くしっかりした物で体の大きさからは明らかに比率が大きいです。またProetidae(科)では珍しく背軸の棘を持ちます。ただPhaetonellusの様に全ての節にあるのではなく、後半の4つ程度に留まります。この種類は、Rken Tafraout産でも産出するようです。
Lower Devonian Proetidae,Proetoidea,Proetina,Proetida TRI-548 ‐Trilobites
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Damesella paronai
古くから知られる種で、独特の存在感の本種は、所属する科も含め孤高の存在です。非常に硬質の母岩という事もあり、昔は状態の良い個体は見かけませんでしたが、近年、欧米の工房により現在の技術で剖出された状態の良い個体が出回るようになると、細かい顆粒に覆われ、平坦ながら鋭い棘を発達させている姿は、より一層存在感のある姿となっています。しかしながら産地情報など未だに謎に包まれ、知られる割に情報を得る事ができない謎の種類です。 中国名:帕氏德氏虫
Middle Cambrian Damesellidae,Dameselloidea,Lichida TRI-523 KushanTrilobites
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Eobronteus laticauda
記載年からも分かる様に非常に古くから知られた種類です。この標本は、この産地の産状を良く表していて、チャートの様な質感にEobronteusの尾部や頭部などの部分化石が積み重なって形成されています。この様にまとまって産出し、完全体での産出は無いのですが、細部の保存は明瞭で尾部や頭部の皴構造を観察するには最適な状態です。
Lower Ordovician Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-711-2 -Trilobites
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Nobiliasaphus nobilis
ポルトガルの他、スペインやフランスなど西ヨーロッパに広く産出する種類です。長く太い頬棘が特徴で、アサフス(目)の特徴を良く表しています。ポルトガル産は、褶曲の影響を受けやすく、実際の体形より伸ばされていたり、体高が低い潰された産状ですので、他の産出エリア産と比較して別種の様な姿の場合もあります。
Middle Ordovician Asaphidae,Asaphoidea,Asaphida TRI-85 ValongoTrilobites
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Comptonaspis swallowi
本種は、ミズーリ州産が有名なのですが、こちらは直線で600㎞以上離れたニューメキシコ州産です。顆粒の無いツルっとした体表面が特徴で、元々特徴が少ない石炭紀の三葉虫ですが。ミズーリ産との区別はつきません。ニューメキシコ産の本標本は、100年以上前に採取された古い標本です。
Lower Carboniferous(Mississippan) Phillipsiidae,Proetoidea,Proetina,Proetida TRI-280-2 Lake ValleyTrilobites
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Parabathycheilus gallicus
小さいが故に目立たないだけで、本種は実に独創的でユニークな姿をしています。緩く巻いた太目の頬棘は、尾板より長く伸びているとはいえ、ここまでは普通です。特徴的なのは、頬に当たる部分が大きく膨らみ、その上に大き目の眼が飛び出ているのです。近縁のケイルルス亜目エンクリヌルスなどに見られる特徴ですが、こちらはカリメネ亜目になります。もう少し大きければ結構奇抜な種類として人気を集めたかもしれません。
Lower Ordovician Bathycheilidae,Calymenoidea,Calymenina,Phacopida TRI-422 FezouataTrilobites
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Rusophycus Pudicum
Rusophycus Pudicum(三葉虫の休息痕)とされる化石であり、所謂、「三葉虫の巣穴」です。泥の中で脚を動かしていたので、左右に分かれる特徴的な形状になります。主が居なくなった後に泥に埋まり保存されるのですが、不思議な事に一緒に三葉虫本体が埋まっている化石を見た事が無いので、本当に三葉虫のものなのか疑問は残ります。周辺部も良く見ると小さな生物が這って回った状態が、そのまま残されており、化石化する事の無かった軟体生物の痕跡である事が分かります。Waldron Shaleという事で、DalmanitesやCalymeneの可能性はありますが、これらの三葉虫が産出するエリアとは違う場所の化石であります。
Upper Silurian Rusophycus Pudicum TRI-712 Waldron ShaleTrilobites
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Acadoparadoxides briareus
一般的に入手可能な三葉虫の内、最大級の大きさを誇るのが本種です。私の全コレクションの中でも最も大きな三葉虫です。片側10㎏を超える重さのため、撮影の為に標本箱を下ろしたり、移動したりするだけでクタクタになる程です。Paradoxididae(科)の仲間は、チェコ、カナダ等広い範囲で産出し、何れも大型になりますが、モロッコ産の巨大さは群を抜いている様に思えます。A.mureroensis(Sdzuy, 1958)が最も知名度がある種名ですが基本的には出回る標本の大きな個体は本種と思われます。2010年代以降に大きさによる細分化が行われ、A.nobilis(SDZUY,1958)やA.levisettii(Geyer and Vincent, 2015)など小型の種類も同定されるようになりました。本種は、見た目のインパクトが大きくインテリア等の一定の需要があるため、模造品や補修品が多く流通しています。個人的に真贋を見分けるポイントとして、綺麗すぎない事やAcadoparadoxides独特の側葉部の成長線がある事が挙げられます。長年市場を見ていますが、10万以下で買える様な標本にレベルの高い標本は先ず無いと感じます。 [Left side:Negative,Right side:Positive]
Middle Cambrian Paradoxididae,Paradoxidoidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-146 Jbel WawrmastTrilobites
