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Eldridgeops milleri
シリカ累層(Silica shale)といえば、デボン紀の良質なファコプスEldridgeopsを産出した事で三葉虫コレクターには知られます。実際にデボン紀のEldridgeopsの暮らしていた海底はどんな世界だったのでしょう。この標本は、そんなシリカ累層の海底の様子を伺い知る事が出来ます。三葉虫の頭部を始めとする欠片が散らばり、他に腕足動物(Brachiopods) 、四方サンゴ類(Horn Corals)などの姿を見る事が出来ます。濃い密度で化石化していますが、この様な状態を見れば保存の良いシリカ累層であっても三葉虫の完全体など多くは存在する訳では無いという事は見えてきます。
Middle Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-41-2 Silica shaleTrilobites
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Schizostylus brevicaudatus
成体でも大きくならなかった種類の様です。一番の特徴は、先端に吻というより角のような尖りがある事かと思います。ファコプスでは珍しく背軸部に棘も確認でき、短くとも鋭い頬棘も持っています。ボリビア産は、Calmoniidae科に偏りがあるので、同じような種類ばかりに見えてしまいますが、本種は非常に特徴がはっきりしているので、見分けがしやすい種類です。 [Left side:Positive/Right side:Negative]
Middle Devonian Calmoniidae,Acastidae,Phacopina,Phacopida TRI-345 BelénTrilobites
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Eremiproetus sp.
実物を見るとProetida(目)とは思えない大きさに先ず驚きます。長い頬棘だけでなく側葉にも長くてしっかりとした棘があり、中軸部にも短く鋭い棘が並んでいます。新種でありEremiproetusという属名も仮であると思うのですが、比較対象となる個体が見当たらないため、正解が分からない個体です。
Middle Devonian Tropidocoryphidae,Proetoidea,Proetina,Proetida TRI-732 -Trilobites
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Acanthopyge sp.
今や幻種となっている存在感のあるAcanthopyge haueriと同型の新種が発見され、市場に出てきたのが2010年頃でした。mdl-storeのブログでは、新産地Boulachghaleとされる地の近郊とされていますが、広域で地名が無い土地のようで、以前のA.haueriが産出したMrakibとは産出場所は違うけど、エリアとしてはMrakib近郊との事で、詳細な産地地図も提供頂きました。ただ、こちらで公開は控えますので、mdl-storeのブログ通りの情報で正しいようです。A.haueriと比較すると華奢で尾部の尾板が小さく、尾部の長い棘は熊手の様に下に伸びているのが特徴です。その棘を含め無数の粗い棘が疎らに存在しており、Hammi氏の剖出により、それらが温存されています。新産地でも完全体自体が極めて少数であり、その中で頬棘が残る個体は数えるほどしか存在していないと言われており、新種も幻種となる思われます。 (2024.3産地情報の記述を更新しました)
Middle Devonian Lichidae,Lichioidea,Lichida TRI-755 -Trilobites
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Acanthopyge(Belenopyge) balliviani
南米ボリビアの高地で産出したAcanthopygeですが、ノジュールという産状のため、細部の保存は良好な一方、全体が残ったものや全体の縁が残り難い特徴がどうしてもあります。イメージとしては、モロッコ産のLobopygeとほぼ同じであります。ボリビア産自体が以前より入手がし難くなっていますが、その中でも本種の全体が残った個体は、とても貴重になってきています。
Middle Devonian Lichidae,Lichioidea,Lichida TRI-266-2 BelénTrilobites
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Monodechenella macrocephala
Monodechenellaは、Proetida(目)中では最も高額な種類の一つでした。見た目が派手という訳ではないので、単に産出が少なすぎるという事情もあったと思います。モロッコ産のDechenellaと比較すると別物と思えるくらい特徴が異なり、寧ろ同じ北米のオハイオ州、ミシガン州、カナダのオンタリオ州等で産出するPseudodechenellaに近縁と思われます。全体的にふっくらとしており、大きな頭鞍と背から尾部にかけて細い棘があったと思われる突起も確認できます。最大の特徴は、全身に細かい顆粒がある事だと思います。
Middle Devonian Proetidae,Proetoidea,Proetina,Proetida TRI-689 LudlowvilleTrilobites
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Ductina(Illaenula) vietnamila
三葉虫コレクターが軽視するけど、実は謎の産地は幾つかあると思いますが、本種も該当するのではないでしょうか。ドイツなどで産出する事で知られる眼の無いファコプスDuctina、小さくて地味で安価なので、意外とベテランコレクターでも所有していない方もいる筈です。近年はIllaenula(Illaenusと紛らわしいが)と呼ばれる事が多くなったり、昔からのD.vietnamicaも混在するなど混乱する状況も見えます。小種名からベトナムと関連するか、ベトナムで近縁種が産出する可能性もあるのかもしれませんが、詳細は分かりませんでした。中国では数少ないデボン紀の三葉虫産地で、市場では本種位しか見かけませんが、Cyphaspidesや眼のあるPhacopsなど三葉虫の種類は知られています。 (中国名:越南沟通虫)
Middle Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-34 -Trilobites
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Malvinella buddeae
入手時は、Calmoniidae(科)の一種という名称で学名不明でした。ノジュール中に埋もれるデボン紀ボリビア産の三葉虫は、見た目が同じように見えてしまうのですが、Malvinellaは一目で区別ができます。それ程、密に生えている訳ではありませんが、全身が棘で覆われていたと思われる突起が確認できるからです。大きくならない種類でありますが、ノジュールという産状であり、棘として取り出す事ができないのですが、実物はもう少し長くて細い棘が生えていて派手な種類だったと想像できます。 [Left side:Negative,Right side:Positive]
Middle Devonian Calmoniidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-267 BelénTrilobites
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Scabriscutellum sp.
背中に棘のあるScabriscutellumが登場しだしたのは、1990年代後半だったと記憶しています。デボン紀モロッコ産は、既に様々な棘々種が登場していましたが、サンドブラストを用いた革新的な剖出技術の向上により、より繊細な体表面の凹凸を飛ばす事なく残す事が出来た要因が大きいと感じます。それまでは、棘があるなんて全く想像もしていなかったScabriscutellumに新たな姿があったとは驚きを得ると共に、更にモロッコ産三葉虫の多様性と保存の良好さに魅了されて行くのでした。本標本も保存が良い個体に見られる尾板縁のギザギザが確認できます。
Middle Devonian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-721-2 -Trilobites
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Scabriscutellum sp.
尾部を改札鋏で切り込みを入れた様に切り取られています。しかし、その後も生き抜いたのでしょう、縁取りは丸く滑らかになっています。脱皮直後に別の生き物に捕食されかけたと思われますが、相手が何物だったのか今となっては不明です。尾部の切り取られた場所の近くの尾部の中心付近も歪みが生じています。このScutellumは、胸部に一つずつ垂直方向の棘が並ぶ種類です。棘のあるScutellumは市場に登場して暫く経ちますが、まだ正式な学名が確認できません。
Middle Devonian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-518-2 -Trilobites
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Asteropyge eonia
ベルギー国境に接するヴィルー・モルハイン(Vireux-Molhain)にはデボン紀の地層があり、周辺のドイツ、ベルギー、などと共通のデボン紀の三葉虫が産出します。現在は国立自然保護区に指定され採掘はされませんが、多くの種類が確認されています。保存状態だけ見ると他のエリアには敵わないのは事実ですが、味わい深い焦げ茶の化石は、欧州の三葉虫らしい渋みを持っています。Greenopsは比較的多く産出しますが、本種を始め数が少ない種類は入手が難しい産地です。
Middle Devonian Calmoniidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-685 JemelleTrilobites
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Greenops widderensis
見た目がモロッコの一般種、Hollardopsに近いので一般種に錯覚しますが、北米のGreenopsは簡単に入手できない種となっています。オンタリオ州(カナダ)やニューヨーク州(米国)で産出しますが、Greenopsの中では本種は最も入手はし易い種と思います。ニューヨーク州では、見た目がほぼ同じのBellacartwrightia(中葉に1列の細かい棘の痕跡)も産出しますが、Greenopsの方が希産で小型である事が多いです。 【標本リンク】Fossilera https://www.fossilera.com/fossils/85-greenops-trilobite-hungry-hollow-ontario
Middle Devonian Acastidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-707 WidderTrilobites
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Greenops boothi
Greenopsは、北米では古くから知られる種類で、モロッコのHollardopsを小さくしたような種類です。見た目は一般種ですが、近年は簡単に入手できない種類となってきました。この標本は、一見すると何か分かり難いですが、よく見ると複眼が見え、更に胸部と尾部の白っぽい殻が確認できます。周りを飾るように覆っているのは、黄鉄鉱です。まるで蝕まれているのに黄鉄鉱に包まれていますが、生前ではなく化石化した時に置換して結晶が成長したもので、極めて稀な現象です。この産地は既に消滅していると思われ、後にも先にも同様の標本は見かけません。
Middle Devonian Acastidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-128-2 LudlowvilleTrilobites
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Thysanopeltis sp.
Septimopeltisの名前でも見かけます。Thysanopeltisの中ではType.Bと呼ばれる種類です。尾板を縁取る棘が大きい棘と小さい棘と交互に並んでいます。時期的には正確には覚えていませんが、通常のThysanopeltisしか見かけなかった2006年位に突如登場し、驚いたのを覚えています。その後通常のThysanopeltisより多く見かける時期もありましたが、近年は見かけなくなりましたので、枯渇した可能性があります。Thysanopeltisは、この様に幾つかのバリエーションを産地より持ち、収集しがいがあるのですが、一般種とは思えない位に入手が難しい種類です。
Middle Devonian Styginidae,Illaenina,Corynexochida TRI-295 -Trilobites
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Gerastos tuberculatus marocensis
デボン紀モロッコ産の入門種としてコレクターの多くが収集初期に購入する種類です。それほど高価でもなく、小型で派手さも無いので軽視しがちの種類であります。大きく膨らみツブツブに覆われた頭鞍、迫出した複眼もぷっくりと大きく、見た目が可愛い三葉虫で、個人的には大好きな種類です。ドイツなど欧州のデボン紀の地層から見つかるGerastos granulatusと見た目は同じの為、同種として扱われる事がありますが、近年、やっと記載が開始される様になりました。頭鞍の顆粒の状態など見分けるポイントは論文にあるのですが、実際にはこの種以外は見かけないと言って良いレベルです。また、細かい種の同定は、レベルの高い剖出がされていないと不可能です。
Middle Devonian Proetidae,Proetoidea,Proetida TRI-42 TimhanrhartTrilobites
