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Eldridgeops milleri
シリカ累層(Silica shale)といえば、デボン紀の良質なファコプスEldridgeopsを産出した事で三葉虫コレクターには知られます。実際にデボン紀のEldridgeopsの暮らしていた海底はどんな世界だったのでしょう。この標本は、そんなシリカ累層の海底の様子を伺い知る事が出来ます。三葉虫の頭部を始めとする欠片が散らばり、他に腕足動物(Brachiopods) 、四方サンゴ類(Horn Corals)などの姿を見る事が出来ます。濃い密度で化石化していますが、この様な状態を見れば保存の良いシリカ累層であっても三葉虫の完全体など多くは存在する訳では無いという事は見えてきます。
Middle Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-41-2 Silica shaleTrilobites
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Phacops logani
デボン紀ニューヨーク産なのですが、余り出回る事のないマイナー産地の標本です。圧縮や褶曲による影響もなく、大型の標本を産出しているのに市場に姿を見せない謎の産地なのです。ViaohacopsやPaciphacops logani(HALL,1860)とも呼ばれることがあるようですが、複眼の縦列が不鮮明ながら7列ほどあり、オクラホマ産の縦列が少ないPaciphacopsとは別概念というよりは、19世紀の記載のままで研究が進んでいなく実際は別学名を付与すべき存在なのだと勝手に思っています。AMNH標本にある Paciphacops n.sp.や隣州ペンシルヴァニア州Onondago Limestone等から産出のViaphacopsと同種か極めて近縁であると感じます。
Lower Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-522 Kalkberg LimestoneTrilobites
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Viaphacops sp. (aff. bombifrons)
オクラホマ州デボン紀では、主流といえるHaragan累層より少し後の時代になるBois d' Arc累層より産出するViaphacops。何故かHaragan累層からは産出していません。Viaphacops bombifrons (Hall,1961)という記載された種がいたのですが、再び属名を失っている理由も謎であります。Kainops raymondiとは複眼の縦列が明らかに少なく明確に区別がつくのですが、Paciphacops campbelliとの比較において頬(Genal angle)がViaphacopsの方が尖っているというのが一番分かりやすいのではと感じますが、種類を分ける程の差があるのだろうかというのが正直な感想です。
Lower Devonian (Lochkovian) Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-493 Bois d'ArcTrilobites
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Chotecops ferdinand
Hunsrück Shaleの軟体部が保存されたChotecopsは、三葉虫コレクターでなくても存在を知っている様な重要な化石ですから、既に新規標本を見込めなくなって久しい現在、例え市場に出て来ても、簡単には購入は出来ない価格に高騰してしまいました。化石化時に貧酸素環境において長い時を経て黄鉄鉱に置換されているため、通常の化石では残らない軟体部が残る事があります。この標本は小さ目ながら、腹側から剖出され触覚や並んだ脚が保存されており、外骨格だけでは伺い知れない腹側の構造を鮮明に残しています。
Lower Devonian (Pragian) Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-94-2 Hunsrück ShaleTrilobites
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Acernaspis orestes
三葉虫の軟体部で一番残りやすいのが触覚ですが、脚に関しては触覚より太くて外骨格にも近いように思えますが、何故か残存する化石は少ないのです。外骨格と違い組織の組成が腐敗しやすい事もありますが、そもそも軟組織が残存する環境が余程整う必要があるのという事もあります。更に脚は大概は外骨格の下側にあるため、折角の完全体外骨格の殻を壊し捲ってまで確認はしないという理由もありそうです。質の高いシルル紀三葉虫が産出するカナダ、ジュピター層ですが、この標本を見るまで軟体部が残存する事は私は知らなかったですが、左の触覚と右前方の脚が、はっきりと分かります。
Lower Silurian(Telychian) Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-466-2 JupiterTrilobites
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Morocops ovatus
最も一般的なファコプスであり、モロッコ産に限らず、ザ・ファコプスといえます。2000年代始めくらいまでは、Phacops speculatorと称され、その後、Barrandeopsという属名に変わり、現在はMoroccopsで落ち着きました。モロッコ産のファコプスは、細かい所まで見ていくと多種多様な種類が現在では提唱されています。本種と比較して複眼や顆粒、体形などがどう様に違うかという基準になる種類に思えます。
Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-23 -Trilobites
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Nyterops yetieifliensis
頭部だけの部分化石ですが、モロッコ産とは違う頭鞍のブツブツの病的な異様さに惹かれ、購入した標本です。比率的に大き目で不揃いのブツブツは、見方を変えれば気持ち悪くも見えます。ファコプスが好みの収集家でも、この種類が好みであるとする収集家は少ないかもしれません。
Lower Devonian(Eifelian) Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-751 FreilingenTrilobites
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Ductina(Illaenula) vietnamila
三葉虫コレクターが軽視するけど、実は謎の産地は幾つかあると思いますが、本種も該当するのではないでしょうか。ドイツなどで産出する事で知られる眼の無いファコプスDuctina、小さくて地味で安価なので、意外とベテランコレクターでも所有していない方もいる筈です。近年はIllaenula(Illaenusと紛らわしいが)と呼ばれる事が多くなったり、昔からのD.vietnamicaも混在するなど混乱する状況も見えます。小種名からベトナムと関連するか、ベトナムで近縁種が産出する可能性もあるのかもしれませんが、詳細は分かりませんでした。中国では数少ないデボン紀の三葉虫産地で、市場では本種位しか見かけませんが、Cyphaspidesや眼のあるPhacopsなど三葉虫の種類は知られています。 (中国名:越南沟通虫)
Middle Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-34 -Trilobites
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Reedops cephalotes hamlagdadianus
この化石をじっくり見ると、三葉虫コレクターでも気持ち悪いと目を逸らす人もいるかもしれません。無数の巻貝が三葉虫の周辺を蠢いている訳ですから、無理もありません。三葉虫の化石として見た時も、醜い異物として邪魔な存在でしかないので、普通のプレパラーターでしたら、奇麗に取り除いていると思います。ただHammi氏は、当時の環境を伝える価値を理解していますから、非常に手の掛かる、この様な産状の化石を残してくれているのです。巻貝は常に共存していたというより、この三葉虫の死後、腐敗する前に集まってきた掃除屋なのだと個人的には想像していますが、他に理由を考えてみるのも楽しいです。
Lower Devonian (Pragian Stage) Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-1-2 LhandarTrilobites
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Reedops cephalotes hamlagdadianus
モロッコのReedopsは、私が初めて購入した三葉虫でした。この標本は、そこから買い替える事、4代目ではあります。この種類を手にした事で、何かに取りつかれ様に三葉虫を収集する事になる元凶となった三葉虫であります。一般種ではありますが、所謂ファコプス系のMorocops, Pedinopariops、Austeropsなどとは姿が異なる事が素人でも分かると思います。これらファコプス系の中では、産出量はそれ程多産する訳では無い種類だと感じます。近年、この標本の様な大型のReedopsの保存の良い個体は、入手が難しくなってきています。 【標本リンク】FossilEra https://www.fossilera.com/fossils/2-9-detailed-reedops-trilobite-atchana-morocco
Lower Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-1 LhandarTrilobites
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Reedops cephalotes
モロッコ産であったら廃棄されそうなレベルの標本かもしれませんが、こちらは本種の命名の元祖ともいえるチェコ産です。既に新規産出が無いチェコ産にあってカンブリア紀やシルル紀産、以外の時代の三葉虫は入手難易度が高いです。姿自体は、モロッコ産と違いが判らないレベルです。母岩の質感もモロッコ産に近いのですが、型抜きに微妙に失敗したチョコレートみたいな質感です。
Lower Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-660 ProkopTrilobites
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Eldregeops(Phacops) rana
アメリカ合衆国には、全ての州ではありませんが、Statefossil(州の化石)が制定されています。日本でも文化に根付いた都道府県の〇〇がある様に、様々な化石が多く産出し、一般にも日本より馴染みがあるんだと思います。時代も様々な州を代表する化石ですが、恐竜など強敵を抑え、3つの州で三葉虫が選出されています。その内、ペンシルヴァニア州にて「Phacops rana」が1988.12.5に制定されています。Phacopsは、現在ではEldregeopsに改称されていますが、どちらかというとニューヨーク州やオハイオ州のイメージが強いと思います。ペンシルヴァニア州産の「Phacops rana」を探して、漸く入手できたのですが、この化石です。保存状態は、世界的な良産地のオハイオ州などと比較してはいけません。何せ「州の化石」なのですから。 【参考リンク】Statefossil https://web.archive.org/web/20091026213222/http://www.geocities.com/stegob/statefossils.html
Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida - Pennsylvania,USA Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,PhacopidaTrilobites
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Adrisiops weugi
この種類を始めて目にした時は、頭部の粒々が水膨れが沢山あるように見えて、病的過ぎて嫌いなタイプでした。その頭部が他のPhacopsと明らかに違い特徴的なので、見分けが付きやすい種類であります。サイドから見ると頭部が丸くなく垂直に近くに切り立っていて、頭部の粒々が滑らかに潰れており下側に行くほど細くなっていきます。複眼の下に横にライン状の隆起列も見られます。頭鞍自体も他のPhacopsより小さめで、胸部と尾部には粒々がありません。 2022.1標本を入れ替えました。
Lower Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-584 -Trilobites
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Phacops sp.
デボン紀ドイツ産といえば、BundenbachやEifel(Gees)といった有名な産地があります。ドイツには他にもデボン紀の三葉虫が産出する産地があり、この標本はLahn(ラーン渓谷)からの標本です。産出種は、Eifelと同様にデボン紀モロッコ産と近い種を産出します。この種類は、小さめの複眼が特徴で、オクラホマ州のPaciphacopsに近い感じです。購入時は、Pedinopariopsとなっていましたが、ドイツの他産地やモロッコの中型種とは似ていないため、一旦Phacopsの仮称としておきます。
Midle Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-293 Rupbach SchichtenTrilobites
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Acernaspis orestes
シルル紀カナダのJupiter累層から、圧縮の影響が少なく透明感さえある質感の良い標本が近年出回るようになってきました。出回るといっても数は多くはありません。この種は、初期のファコプスの仲間であるAcernaspisです。ファコプスの代名詞ともいえるデザインは、丈夫な殻と完全に丸くなる事のできる防御態勢、高度に発達させた複眼と棘棘とは違う防御方法を確立し、デボン紀には一時代を築きました。
Lower Silurian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-466 JupiteTrilobites
