早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫 ホロー荘の殺人

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昭和五十二年十二月三十一日 発行
昭和六十年五月二十日 十八刷
発行所 株式会社早川書房

昭和21年(1946年)に発表されたアガサ・クリスティ(早川書房ではアガサ・クリスティーと表記)の長編小説「ホロー荘の殺人」。
ある週末、行政官のヘンリー・アンカテル卿とその妻ルーシーは、自邸「ホロー荘」に医師のジョン・クリストゥとその妻ガーダを始め、彫刻家のヘンリエッタ・サヴァナクや、ルーシーの従妹たちを招いた。彼らの関係は表面上は穏やかだが、それぞれの心の奥底には愛憎や葛藤が渦巻いていた。そんな中、ジョンの昔の恋人で女優のヴェロニカ・クレイが現れ、「ホロー荘」は一気に不穏な空気に包まれる。そして、事件は起きた。「ホロー荘」のプールの端にジョンが血を流して倒れており、その傍らには拳銃を手にしたガーダが虚ろな表情で立っていた...
長閑な貴族の邸宅を舞台に、男女間の愛憎の縺れが生んだ殺人事件を描いたアガサ・クリスティの傑作ミステリーですね。クリスティの作品としては比較的地味な印象ですが、「この人物は何故こんな行動をとったのか?」という心理描写が秀逸で、ミステリーの体裁を借りた文学作品との評も頷ける、読み応えのある作品です。なお、クリスティが創造した名探偵、エルキュール・ポワロ(早川書房ではエルキュール・ポアロと表記)が登場するシリーズの一作でもありますが、謎解きよりも登場人物たちの心理描写に重きを置いた作劇ということもあって、ポワロは他の作品よりも一歩引いた印象となっています。事実、クリスティは、この作品においてはポワロの存在を「合わなかった」と思っていたようで、のちにポワロ抜きで戯曲化しています。日本では昭和60年(1985年)、松竹で野村芳太郎監督が『危険な女たち』の題名で映画化しています。ちなみにこの映画ではポワロに相当する役どころとして“枇杷坂周平”なる推理作家が登場、この役を何と石坂浩二が演じています。ハヤカワ・ミステリ文庫には昭和52年(1977年)に収録されました。
画像は昭和60年(1985年)に早川書房より刊行された「ハヤカワ・ミステリ文庫 ホロー荘の殺人」です。
ハヤカワ・ミステリ文庫のクリスティ作品の装画といえば、イラストレーター、真鍋博氏のイメージが強いのですが、こちらは映画『危険な女たち』公開に際して流通していたバージョンで、同映画のメインキャスト4人の女優の写真が載っています。映画公開当時の日本はまさにバブル前夜といった感じでしたが、そんな時代の雰囲気が偲ばれる表紙ですね。

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