早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫 災厄の町

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昭和五十二年一月三十一日 発行
昭和五十四年十二月十五日 十刷
発行所 株式会社早川書房

昭和12年(1942年)に発表されたエラリー・クイーン(早川書房ではエラリイ・クイーンと表記)の長編小説「災厄の町」。
ライツヴィルの町の名士、ジョン・F・ライトの次女、ノーラとの結婚式前日に、彼女の夫となるはずだったジム・ハイトが姿を消して3年。そのジムが突然、ライツヴィルに戻ってきた。二人は結婚し、今度こそ幸せな夫婦となるはずだったが、ある日、ノーラはジムの読みかけの本の間から、ジムが彼の妹、ローズマリーに宛てた未投函の奇妙な三通の手紙を見つけてしまう。そこには夫の筆跡で、妻の病状の悪化と死を報せる文面が...。そしてローズマリーがライツヴィルにやって来て、町が不穏な空気に包まれる中、ノーラの毒殺未遂事件とローズマリーの毒殺事件が起きる。果たしてあの奇妙な三通の手紙は、事件を予告したものだったのか?ひょんなことからライト家と関わりを持った、推理作家にして名探偵のエラリイ・クイーンが事件の謎に迫る。
架空の町、ライツヴィルを舞台に、男女間の愛憎の縺れが生んだ殺人事件を描いたエラリー・クイーン中期の代表作ですね。このライツヴィルの町を舞台にした物語は長編・短編でいくつか書かれていて、この「災厄の町」はその最初の作品となりますが、昭和54年(1979年)に公開された松竹映画『配達されない三通の手紙』の原作としても知られていますね。当時、探偵小説・推理小説に夢中だった私も映画の原作ということで読みましたが、その時は国名シリーズやレーン四部作に比べると「地味だな」という印象でした。しかし、大人になって読み返してみたら、それまでのパズル的な推理ドラマよりも人間ドラマを重視したストーリーが実に読み応えがあって、その評価は一変しました。今ではクイーンの最高傑作と評する人も多いみたいですが、それもなるほどと頷けます。ハヤカワ・ミステリ文庫には昭和52年(1977年)に収録されました。
画像は昭和54年(1979年)に早川書房より刊行された「ハヤカワ・ミステリ文庫 災厄の町」です。
ハヤカワ・ミステリ文庫のクイーン作品の装画といえば、詩人であり、グラフィックデザイナーとしても活躍した北園克衛氏が手掛けたものが有名ですが、こちらは映画『配達されない三通の手紙』公開に際して流通していたバージョンで、カバーには同映画のスチール写真が使われています。今となっては映画のほうはすっかり忘れ去られてしまった感がありますが、この表紙を眺めていると探偵小説・推理小説に夢中だった頃を思い出します。

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